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感情的付加価値とブランディングデザインの関係性をサッカーコーチの経験から考察する

2025/06/09

セルワールディング 服部 大吾

ブランディングデザイナーとしての実感

企業の価値を見つめ、その魅力をどのように人に届けるかを考えること。それが私たちブランディングデザイナーの役割です。

その中で私自身が特に大切だと感じるようになったのが、「感情的付加価値」という考え方です。

この言葉の本当の意味を、自分の中で深く理解するきっかけとなったのは、サッカーコーチとしての経験でした。

 

サッカー指導から得た気づき

約1年前、私は小学3年生のサッカーチームのコーチを引き受けました。

当初はなかなか勝てない日々が続き、選手たちの意欲も低く、まわりの大人たちからも「この学年は弱い」と見られていました。

しかし、指導する立場にある私自身がその見方をしていては、子どもたちの可能性は広がりません。

だからこそ私は、彼らを「できる存在」として信じ、目指すべき姿を前提としたコミュニケーションを心がけました。

最初は、少し厳しいと感じた子もいたかもしれません。けれども、時間が経つにつれて、子どもたちの意識は少しずつ変化していきました。

やがてチームは試合に勝てるようになり、小さな大会では優勝を果たすまでになりました。

そして何よりうれしかったのは、子どもたち自身の口から「優勝を目指したい」と聞けるようになったことでした。

ただ与えられるのではなく、自分たちの意志で前に進もうとする姿勢に変わったのです。

この変化は選手たちだけでなく、保護者の皆さんの意識にも影響を与えました。

以前は「この子たちは弱い」と感じていた方々が、「スクールに通わせた方がいいでしょうか」と前向きな相談をくださるようになり、チーム全体の空気が変わっていきました。

 

感情的付加価値とは何か

この経験を通して私は、「感情的付加価値」とは何かを改めて考えました。

それは、数字や結果だけでは測れない、人と人とのつながりや、一体感から生まれる価値です。

  • 「優勝する」=機能的価値(見える成果)

  • 「自信がつく」「チームとしての一体感を得る」=感情的付加価値

この考え方は、そのままブランディングにも通じます。

  • 「売上が上がる」=機能的価値

  • 「社員がブランドに誇りを持つ」「お客様がブランドに共感する」=感情的付加価値

ブランディングは、単にロゴや広告を作ることではなく、ブランドを通じてどのような感情を育み、どのように人とつながっていくかを設計することだと思うのです。

 

これからのブランディングデザイナーに求められる視点

ブランディングデザイナーにとって大切なのは、この「感情的付加価値」を意識し、それを丁寧に育むためのデザインを実践することです。

  • 目に見えない“意味”をデザインする

     ロゴはブランドの象徴に、広告は世界観を伝える手段に。

  • 共感と一体感を育むストーリーを描く

     企業の価値観や存在意義を言葉やビジュアルで丁寧に伝える。

  • 既存の枠を超えて、新たな価値を見出す

     Dysonが「掃除機」を超えて「掃除の体験」を変えたように。

     Patagoniaが「服」だけでなく、「自然との向き合い方」を提案したように。

  • 体験全体をデザインする

     開封のときの高揚感、商品の手触り、店舗の空気感など、五感で感じるブランド体験を意識する。

  • 企業の内側にもブランドを浸透させる

     社員一人ひとりがブランドを信じ、語れることこそが、本物のブランドづくりに繋がる。

  • テクノロジーと感情のバランスを取る

     AIがどれだけ進化しても、人の心を動かすデザインは、人の手でしか生み出せない。

 

結びに

「ブランディングデザインとは、企業やブランドの“目指す姿”を描き、人の心を動かし、一体感を生み出すこと。」

サッカー指導を通じて私が学んだ最も大きなことは、子どもたちの目標が「勝てたらいいな」から「優勝したい」へと変わっていったように、ブランドもまた「売れればいい」から「誰かとつながる存在」へと変化していくということです。

その変化のプロセスこそが、ブランディングの本質なのではないかと、私は思います。

 

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