生きているということ いま生きているということ それはのどがかわくということ 木もれ陽がまぶしいということ ふっと或るメロディを思い出すということ くしゃみすること あなたと手をつなぐこと 生きているということ いま生きているということ それはミニスカート それはプラネタリウム それはヨハン・シュトラウス それはピカソ それはアルプス すべての美しいものに出会うということ そして かくされた悪を注意深くこばむこと 生きているということ いま生きているということ 泣けるということ 笑えるということ 怒れるということ 自由ということ 生きているということ いま生きているということ いま遠くで犬が吠えるということ いま地球が廻っているということ いまどこかで産声があがるということ いまどこかで兵士が傷つくということ いまぶらんこがゆれているということ いまいまが過ぎてゆくこと 生きているということ いま生きているということ 鳥ははばたくということ 海はとどろくということ かたつむりははうということ 人は愛するということ あなたの手のぬくみ いのちということ 『生きる』谷川俊太郎
好きなことばです。
ほとんどの人は俊太郎さんのことばで大人になったのではないでしょうか。
絵本っ子だった私もそのうちの1人です。
記憶にある一番古い絵本は「ことばあそびうた」。
子どもながらにおもしろいと思って、絵本だらけの本棚に表紙が見えるように飾っていました。
かっぱかっぱらった
かっぱらっぱかっぱらった
とってちってた
かっぱなっぱかった
かっぱなっぱいっぱかった
かってきってくった
『ことばあそびうた』
やっぱりかっぱのページが好きでした。
「なっぱ」がなんだかわからなくて、詩が好きな祖母に聞いた記憶があります。
大人になると、
詩としての素晴らしさとか、いかにすごいかとか、そういうのを説きがちですが、
俊太郎さんのことばはそんなことを考えるまえに、小さいときの純粋なこころに連れ戻してくれます。
俊太郎さんのまっすぐなことばは、たしかに血肉となって、
たくさんの人のなかで生き続けるんだと思います。
君は過去になれない男
目の前からいなくなっても
いのちにあふれた絵とデザインに
君は軽々と生き続けている
ひとことで言えば君には
naturalという英語がふさわしい
自然という日本語だけでは
捉えきれない君というヒトの巧み
君のカラダとココロの深みにある
涸れることのない笑みの泉が育んだ
みずみずしい木陰で私たちは憩う
意味を問いかける前に
君は線で色で形で機知で答えてくれる
ここでそしてまた未来のどこかで
『natural ─和田誠へ』
たくさんのことば、肉声を遺してくださったので、
ゆっくり、ていねいに、
たくさんの時間をかけて、これからの私の血肉にしていきたい。
昨年開催された、立川のPLAY! MUSEUM「絵本★百貨店」の写真たち。
A friend doesn’t have to be a person. ─ にんげんじゃなくても ときには ともだち。